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No.481【妄想AI】 

 ラインの後方2m。任されたこの仕事に全神経を集中して、コンマ1秒を極めるがごとくにフラッグを振る。凛とした毅然たる仕草。最近のバレーボールの国際試合では、この姿はみられません。AIによる揺るぎない判定方法が導入されたからです。
 AIは、翻訳、設計にとどまらず、論理的な回答や解決策、皿には感情をももち合わせたようなアドバイスまでと高速で進化し続けています。
 「主審のAIロボのジャッジ君です!」「記録係のレコタンです!」もちろん、タッチネットは瞬時に電子音と赤いRED表示。チャレンジシステムは存在しません。暴言だってAIが判断します。
 タイムアウトやメンバーチェンジはベンチの監督AIデレクターXが最高に得点力の高い判断をし、指示を出します。もちろん、全選手の過去の戦歴、心理検査の結果、心拍数から健康状態すべてのデータが入っています。妄想です。
 ちょっとまてよ? 進化の先には、試合の必要性なし。世界大会の結果もIBMの量子コンピューターによって数秒でほぼ100%の合致率となったら・・・進化の先には空虚感しかない。見方を変えれば戦争はなくなるのかもしれません。でもね・・・

No.482【1年前の君が】 

 二分の一成人式、4年生でよくある授業の一環。未来の自分はどんな姿か、何を思って、どこを目指しているのか、夢という言葉が、それくらい先のことならとても似つかわしいものです。
 今、を起点に考えた時、1年前の自分が今の自分を見て、どんな言葉を発するのでしょう? 容姿もちょっと変わっているなと感じることは、写真を見ればわかります。学力は、算数や漢字のテストを参考にすればだいたい進歩がわかります。では、内面は同でしょう?
 ここで言う内面とは、考え方のこと。(心と考え方の違いについては以後のコラムで)。あの時の目標が達成できた? 想定以上! なかなかやるじゃん! 三日坊主? 残念な自分から目を背けたい? そもそもそのこと自体を考えることから逃げてしまう自分をどこかで好きになれていない?・・・人それぞれと言ってしまえばそれまで。
 せっかくなら、想定以上の自分をほめてあげる自分がいてほしいものです。だって一瞬の積み重ねを365日もやってきたんだから。逆に考えれば、その一瞬の積み重ねをさぼってきた人には、当然の報いが現れなくては世の中理不尽です。
 せめて、今を1年前の自分が見て、「到達点はそこまでか!」だったとしても、「でも、その経緯は称賛に値するよ!」と自信をもって言える自分であってほしいと思います。
 さあ、1年後の自分に語り掛ける準備をしよう! それはつまり、明日の自分に語り掛ける準備にほかなりません。

No.483【私のミスで】 

 母が亡くなり10年余。再生不良性貧血という難病でした。いえいえ、ここでそのことを懐古し、しんみりするつもりでは全くありません。当時の担当医の方とはよく話しました。病棟の無菌階の個室。高齢にもかかわらず奇跡的に回復した手段に至るまでには、徹底した医療の段階的な措置が準備されていました。母の日常への復帰は、その最後の手段が効き目を発揮してくれました。何段階も何段階も・・・
 心が折れた。その言葉を自分で口にする時、振り返ればそれは「だから仕方ない」の想いがほんの少し含まれています。つまり、言葉にすることで心が折れるという事象をあたかも理由のようにしてしまいます。でも、本当の理由は「心が折れた」ことではなく、また同じことを(失敗を)してしまうのではないかという恐怖心を覆すプラス思考の準備と、実行する勇気と、体現のスキルがなかったことが大きな原因です。だから「あきらめたらそこで終わり」というフレーズが成り立つんだと思います。
 「私のミス」でチームを窮地に、敗戦に、そんな経験を誰しもがもちます。そんな経験をむしろできたことがチャンスと思えるには、次に間違いなく来るであろう窮地に「心が折れた」などと発する必要がないほどの幾重もの準備すること。それをいくつも乗り越えてきた人が、チームを救うのでしょう。

No.484【強いハートに?】 

 483を読まれた方から、もう少し具体的な内容をとのオーダーがあったので、追記です。
コートでミスの連発。私のせいで・・・。この状況にかかわるコラムをいくつも書いてきました。ということは、滅多にないことではなく、誰にでも高確率で訪れることと言えます。その本人はおおむねこんな希望を言います「ハートが強くなりたい」、また「心が折れないように頑張りたい」。
 以前、こんな状況にはまったメンバーに告げた内容をかいつまんで紹介します。以下、抜粋です。
 一つは、自分自身をしっかり見ること、知ること。
 色々考えていることは伝わってきます。君が下手だからではありません。言ってしまえば、誰でもそんなに技術的に上級ではありませんよね。今、とても大変な想いをしていることもわかっています。自分を知るということは、自分の弱点や強い所が具体的に、わかっていて、その策が言葉やイメージ(映像的に)としてわかっているということ。
 他のメンバーも「わかっている」といいますが、はたして本当にそうでしょうか。実際に、その場面に直面し続けた時に、チームとして、復活できなかったわけですから、策を練って、実行して、手ごたえのある形にしていくほかないと思います。やっぱりできませんでした・・・を想定してはいけないと思います。絶対に突破する経験をもがいて模索してチャレンジして手に入れることが必要です。
 二つ目は、準備を自分の判断で、自分の考えだけで「これで十分」とか「一生懸命やった」と思い込まないこと。一生懸命でないとは決して思いません。むしろその逆です。一生懸命やっています。ただし基準の問題です。そこで、次の問いに即座に答えが出せますか? 出せなかったらまず、答えの準備をしてみましょう。
「1本目のレセプションはなぜ成功しなかったのか」・・・「こうすれば成功したはず」がわかっているならなぜ成功しなかったのかということ。初めからやらなかったのか、頭と心と動きの準備をやり切れていなかったのか?
「二本目はなぜ連続して失敗したのか」・・・2本目のレセプションまでに修正すべきことが具体的にわかっていて、実行したのかということ。では三本目は?
 シンプルに考えるといいと思います。しかも丁寧に、試合前日の整え方から順番に。想定される場面を全部。どんな質問にも全て即答できるように。
・前日にやること、考えること、実行することは?
・当日の朝~体育館~試合開始にやること、考えること、実行することは?
・レセプションを迎える直前にやること、考えること、実行することは?
・一本目成功した時にやること、考えること、実行することは?
・一本目成功しなかったときにやること、考えること、実行することは? 二本目も成功しなかったときは?
 以上のことを、自分の判断だけで決めつけないことです。「自分のものさし(技術的な基準と考え方や意識の基準の両方)」は、同じ景色をみんなで見るために当たっているのかどうか。仲間と相談しましたか? 「慰めてくれてありがとう。頑張るから心配しないでね、見ていてね!」でとどまるべきではないと思います。また、慰めてほしいと考えるのと、アドバイスを頼むと考えるのとでは、ステージが違うこと、今の君にはアドバイス、相談や検討の方が合っているのではないでしょうか。
 三つめは徹底的に実行して試合に臨み、試合で実行すること。
みんな「自分なりにはやれました」ということがあります。もしかしたら、そういってしまえば周りやコーチは「やったのならよし」と言うしかないのではないかとも受け取れます。
 そんなつもりはないと思いますが、全員が納得できて自分も納得できて初めてその言葉を使っていいんだと私は思います。
 かなり厳しい言い方ですみません。でも、コートに立つということは、立てなかったメンバーの背中を踏み越えてそこにいるとも言えます。責任と自覚が必要ですよね。他のチームや過去の先輩たちのチームでもそれを求められる状況がありました。
 何度も言いますが、誰しもプレーに自信が完全にあるなんてことはありません。必要なのは、一~三を徹底的にやったということへの自信と勇気と初動の意識と表現力です。既に技術については、合格点に近いと思います。
 こんなに一生懸命に考えて、チームの一員として解決に向けて苦しむことができることは、そんじょそこらの小学生にはまずないチャンスといえます。このチャンスを生かしましょう! 仲間と。
 後述追記・・・タイトルの「強いハートに?」とコラムとの整合性についてちょっと補足です。強心臓はもって生まれたものがあります。だから強くなるか否かは不明です。大切なのは、窮地を突破するための事前の策をもち、徹底的に克服に向けて工夫し続けること。その達成レベルが突破の根拠。これをハートが強くなったというのか、策が根拠にあるという自信になったことが結果として強心臓と表現できるのか・・・創意と努力次第ということです。(長文失礼しました。ちょいバレですからご容赦を。)

No.485【ホールディング?】 

 以前、全国大会を観戦(応援)に行きましたが、「?」明らかにホールディングなのではというコートもありました。確かにそれを取ってしまうと試合にならない、ここまで来ているし、情けも出ます。きっと6年生ではないのかもしれないし・・・などの忖度はどの大会でも話題や疑義が出されるものです。確かにそれが原因で勝敗に大きな差は出ないのかもしれません。大事なことはもっと他にあります。とは言え、そんな不信感なく試合ができればなんとも気持ちがいい。
 よくあるパターンは喉のあたりからトスを持ち上げるタイプです。修正としては大きく三つの観点で考えています。一つは意識~初動。二つ目はタッチからリリースの技術。総じて技術と言ってしまえばそれまでなのですが。三つめは評価方法です。
 一つ目の意識は、ボールをタッチする以前の部分。高い位置から姿勢を低くしながらボールを呼び込むと質全的にタッチの時間が長くなります。また、ボールの落下地点に間に合えばいいという意識も同様の結果になります。よって、落下地点に我先に!タッチの前にすでに押し上げる準備の姿勢を作ります。ちなみに、ここで記述する内容は、上級者には向きません。掌のセットの位置は、タッチの最もおでこに近い位置。そこから90度の屈伸状態から160度の伸展状態まで膝を伸ばす動きになります。トス自体の動きはオーバーハンドのコラムを参照してください。HIGASHIのメンバーは、先輩が作ってくれた参考書を!!
 二つ目は、リリースの技術。上級者になればジャンプトスなどで高いタッチポイントからのリリースが色々な観点から有利です。でも、初級(ホールディング~)の子には、突き放すようなイメージでボールの行方を外旋した手首の間から見続けるような動きになるのがいいと思います。のど(首)のあたりからキャッチをしてしまう人には、軽くジャンプトスの連続やヘディングでポイントのイメージをつかむのも方法です。
 三つ目の評価方法。自分ではいい感じのつもりでもかなり状況は良くないケースがほとんどです。横から、後ろから、スマホのスロー撮影機能を使って丁寧に振り返ったり、仲間同士で指摘し合うこともいい方法です。特に、自分で指摘できないということは、観点がわかっていないことになります。お互いのチェックは、コーチに指摘されるより意味のある方法です。

No.486【HIGASHI未来PJ(プロジェクト)①】 

 先日、OGの保護者の方から、こんな話をいただきました。
 「HIGASHIの指導方法は独特。子どものずっと先を見通して、子どもたちが自分で考えてかかわりあって成長していく過程を経験できる。その力が身に付いていく方法論が、先進的でしかも何年も前から実践し続けていることが今、よくわかります。しっかりした理念があり、子どもたちも長い時間をかけて身に付けられています。さらに、子どもが変化することで、大人も考え方が変わりました。」
さらに、その理念や実践を、これからコーチングにかかわろうとする学生や中学部活の地域移行に向けて、活用していくことができるといいんじゃないかとの提案と協働の申し出でした。
 そこで、まずは理念の確認と実践の整理と今後の進行方向のめぼしを構築しましょうという一歩を踏み出しました。ザクっと言えば、自考自成、チーム全体が成長しよう。そこにいくつかの理念や手法や広げ方の柱があります。その一つが「ピアコーチング」「ピアラーニング」です。これはバレーボールに限定されることではありません。むしろその逆です。会社でも、学校でも。
 今回のコラムでは、初回①なので、マトリックス表(OG保護者がベースを作成してくださいました。私は乗っかっただけ・・・)の紹介です。大学の体育学部や教育学部の学生さん、ゼミ、有識者やスポーツ関係者と協働で一歩ずつすすめられたらなと思います。そして一番は、OGの参画。

 この表内の記載事項は、既に実施している内容、一部実施している内容、これから実施を計画している内容が含まれています。目標というより、活動分析という使い方です。

 

No.487【HIGASHI未来PJ(プロジェクト)②】 

 理念の柱を幹とすると、先述のマトリクス表は、枝葉のようなイメージです。この二次元の枝葉のそれぞれの項目からぶら下がっているのは、実践における「目的、方法、成果、課題、課題解決にむけて」です。これはイメージとしては「実」にあたります。

 今回のコラムでは、プロジェクトの「幹」についてと「実」についての紹介をしたいと思います。とはいっても、構想がロードマップとして最終到達点まで整っているのではなく、言ってみれば暗中模索です。でも、発信する意義はあるんじゃないかな? と思います。

だって、子どもたちには「勇気をもって発信しよう! そこから変わる、つながる、見えてくるものがあるんだぞ!」って言っちゃってる手前・・・

 「幹」にあたる理念や進行についての文書は、概要編、大人向け、子ども向け、を作ってみました。「実」にあたる内容については、サンプルとして作ってみたものを2つ掲載しました。ちょいバレ486と併せてご覧ください。

 鼻で笑うもよし、興味をもっていただくもよし。学生さん、卒論や課題のテーマとかにでもどうですか?

 言い忘れましたが、このPJの目玉の一つは、子どもが主体的に参画してもらう点にもあります。このチームらしく。

No.488【気楽にググる】 

 何? 何で? 写真を撮ってアプリで検索すれば、その花の名称の候補がかなり高い精度で検索されます。何科なのか、自宅で栽培できるのか、そのコツは? なんでも感でも検索できます。そしてその探求心の赴くままに蛇行しながらも一定方向に進んでいくイメージがあります。
 Instagramを最近導入しましたが、ほとんどその構造を把握できていません。でも、感覚的に求めていそうな情報がコンパクトに関連性を含みながら勝手に提供されてきます。Youtubeも同様ですが、Instagramはそこから人をつなげるところがミソなんでしょうか。
 不思議なもので、この連鎖は、次から次へとタップやスワイプを後押ししてきます。悔しいかな自発的なのか他力に誘導されてなのか(おそらくは後者優位)、勝手にブレインストーミングが始められています。これをラウンドテーブルディスカッションで行えば、もう企業の商品開発室や企業戦略会議そのものです(やったことないけど)。
 店舗再生、地域おこし、課題解決の方法(課題解決の方法の一つの中にありながらも)。おや、自分の職業選択や生き方や困り感の解決のために、有効性の高い方法と言えますね。
 そういえば、以前、ブレインストーミングを紹介した際に、オズボーンのチェックリストという観点が検索に引っかかってきました。これもググりサーフィンで探っていくと、発想力、創生への起点や行動力につながるなぁと思いました。いずれにしても、文字に起こしてくっつけたり組みあわせたりを楽しみながらワクワクしながら発想する円卓が想像されます。こんなミーティングもおもしろい。
 気が付くと、今回のコラムもあちこち蛇行しながら何となく一定方向に流れているような・・・行きつくところ、道を外れてAmazonでポチってしまう・・・そうじゃない・・・

No.489【四分休符とヘ音記号】 

 四分音譜のお休み版が四分休符。ト音記号の楽譜の下の「ド」がヘ音記号楽譜の上の「ド」。とまことしやかに言う私は、合宿所のピアノで子どもの誕生日に「ハッピーバースデー」を奏で、退(ひ)かれた…。弾いたのに。おやじギャグはさらに退かれる。
 音楽の話ではなく、ここでは、ちょいバレ292に登場した四分休符病とさらにヘ音記号病について言及したいと思います。
 四分休符・・・正確には、四分休符をひっくり返した形に近いスパイクフォームです。たぶんですが、これについては体感と筋力の向上に伴ってある程度修正されてきますし、どこに力をどのタイミングで入れるかの意識で、かなり修正できると思います。ただし、肘が下がるフォームについては、顎を引く、のどや首や胸部の情報にスイングの瞬間に力をこめるイメージと、肘が下がる前に手首が頂点を通る円弧を描かなくてはなりません。このフォームの獲得には、実際にジャンプして打ちながらの修正は困難です。打ち付けやスイングの手稲にな練習(VTR+評価→改善)を何万回も繰り返す必要があります。
 ヘ音記号・・・こちらはかなり手を焼くことになります。上半身がヒットのかなり前に前傾してしまい、打点が圧倒的に下がってしまうフォームです。修正には、まず自分の最高到達点を知ること。全身をしっかり伸ばして打ち急がないこと。ゆったりした弱い大きなスイングを意識して体現できていることを確認する必要があります。力任せになればなるほど遠のくきれいで合理的なフォーム。試しに、その子には、高い打点でのジャンピングフローターサーブの練習をしてみるのも手です。ただし、一筋縄ではいかない。マッチしないと感じたら・・・辞めちゃいましょ。
 可憐なワルツのリズムの助走から、しなやかな高速スパイクの響き! カッコいいフォームを目指しましょう。

No.490【離れたのは・・・】 

 もうやり切った。高校卒業時そう思いました。当時はリベロ制度がなく、さすがに160そこそこでは歯が立たない。適当なかかわり方で固執するよりは新境地を、個人技でチャレンジできるものを見つけたいな。大学に入るのにもストレートではなかったし、ちょっと気楽に過ごしてみたかった。バレーを離れました。

 確かにその選択は、自分の結果は自分の責任や成果が大きくかかわることなので、充実感がありました。その一方でその状況でも単独ではないし、仲間と達成したいなと思えるひとっちに出会ったことをきっかけに再びチームスポーツのバレーに。

 離れた時には脳みそに無かった感覚や観点が、バレー初心者から教えてもらいました。中学時代の体罰全盛期、何かが違うことが大人になってやっとわかりました。延長線上ではなく、起点としてそこからの考えるバレーの始まりです。

 先日、すっごくバレーの上手なチームのOGが来てくれました。彼女は、もちろんコーチングをしてくれましたが、チームの様子やコートの中をすごく観察していました。「高校生が話しているような内容、伝え方ですね。」。それを目指しているわけではありませんが、そう映ったのなら半分成功しているようなうれしさでした。技術がついて行けばさらにいいのでしょうけど。技術論ももちろんあります。でも、もっと大切なことが瞬時に自然とコートの中で修正や確認できる力。

 OGの彼女は大学では別のスポーツを選択しそうです。現役の小学生もどこかで新しいチャレンジをするのでしょう。きっとその先、バレーの神様に導かれるように戻ってくるんじゃないかなと思います。離れるのは、戻るためなのかもしれません。

No.491【未来を育まない公園】 

 以前、オランダの水路の話題をコラムに載せたことを思い出します。最近の学校には雲梯(うんてい)がありません。回旋塔、ブランコ、シーソーも。体育館から上り綱が消え、教育課程に記載のないトランポリンの購入はできないし、新設のプールには飛び込み代がないのが現状です。理由は、お察しの通り、危険回避です。果たしてこれが、本当に転ばぬ先の杖になるのか・・・
 ケガをしてまで身に付けるものがあるに値する遊具なのか? そう言われてしまえば、責任は負えません。しかしながら、誰もが違和感や危機感をもちながら事前の危険回避を優先しています。危機管理に対する想定力、想像力は確かに大切です。安全すぎる公園で、そこでできる遊びを工夫するしかありません。でも、人間が生物である以上、経験して得る危機管理能力こそが定着するものです。では、何かあってからあなたは責任が取れるんですか? リスクマネージメントの講師は必ず言います。そのはざまに明確な答えを出せないから「安全」最優先になっているんだと思います。本当に転ばぬ先の杖になっているのか?
 私が出す答えはこうです。どうなったらどんな危険になるかを本人に考えさせる。多少の危険をはらんでいても、創意工夫のある、感覚が揺さぶられる、高揚感のある、仲間と楽しめるなどの遊具は設置しよう。ただし、そこでケガをしたからといって大人は文句を言わない。・・・きっと敵をつくりました。奔放なちょいバレ故にご容赦願います。

No.492【大人になったら使わない】 

 数学の定理、物理の法則、漢文の知識・・・確かにほぼ使うことはないですね。多くの博識者は言います。「それは違う、興味の種である、基礎基本の力である、職業の選択肢を広げるためである、信頼される有能な人材の素になる」って。おっしゃる通り。賛成です。でもちょっと日本の教育課程は柔軟性が無いように思えてなりません。小学校高学年は29時間/週です。時には7時間目や土曜授業で年間1015時間をクリアしなければなりませんし、既定の時数を各教科科目等でクリアする責務があります。低学年で15分、高学年で20分程度が集中力の続く目安。日本は隙間なく詰め込まれている印象があります。

 とはいえ、通過しない選択肢はほぼありません。ただ、ちょっと様子は変わってきていますが。そもそも関心を持つに至るまでに基礎は必要です。関心を広げて手ごたえを感じるまでにはさらに探求が必要ですし、そのために使いこなす多くの技量が必要です。日本はその内容が多すぎるような気がします。少なくとも小学校の内容は考える力と考えようとする意欲をつける策に留め、それほど深く細かい内容は不要です、と個人的には思います。

 大人になるために持ち合わせている種や芽は、使わないことを想定して育てるものではありません。精選されたものを深堀りすること、汎化することや創生することの道筋をたくさん体験することを、小学校時代にできる環境が必要です。日本、特に都心ではちょっと難しくなってきたのかな。書いていて釈然としない心境になるコラムです・・・じゃあせめて、小規模の学年を超えたメンバーがいる小学生のクラブチームなら・・・できる工夫があろうというものです。大人になってこそ、その過程でこそ使える力の育成へのチャレンジ。

No.493【応援の美学】 

 「チームでは、HIGASHIが一番子供が引っ張っていってそれを大人が手伝うみたいに子供が一番のチームでいたんじゃないかなぁと思います。」これは、大会直後の高学年に課した「作文+未来日記」の5年生のメンバーの作文の一節です。

 応援には伝統、地域性、エピソード、熱意が込められています。それ故、舞台で演じるメンバーの士気を高め、チーム力を向上させることができます。その方法、内容はチームより様々です。個人的にいいなぁと思う応援に出会うことが時々あります。逆に、気持ちは分かりますが、主人公を凌駕してしまっているんじゃないかと思われる状況にも出会うことがあります。大きな大会、ハイクラスの舞台になると後者が多いように思えます。後者については、それが舞台の主人公たちの背中を押す大きな力になりうる、舞台の主人公たちもそう感じているはずだという考えもわかります。実際そうかもしれません。ただし、それが一番だという選択肢にのみに傾倒してしまうような環境であることも否定できないのではないかと考えます。

 いろいろな主旨の応援があっていいと思います。でも、特に小学生の段階であれば、冒頭の作文の筆者が感じ取ったことを後者の応援では感じ取れなかったはずです。であれば、彼女の経験は自分たちらしい美学に包まれていたことになります。

 そしてこうも思ったはずです。今度は、私が舞台で! その時の応援は、きっとこの美学が引き継がれた特別な感覚の、自分たちだけの力を発揮できる空気が充満する事でしょう。

No.494【救っているのは?】 

​ 「そこまで触れたら十分だ!」「このプレッシャーの中だからしかたないよ。」
そう仲間に言葉をかけるチームメイト。包容力と優しさあふれるその子は求心力もある・・・という状況を否定するつもりはありません。でも、よ~く胸に手を当てて考えてみましょう。
 その言葉が救っているのは誰なんでしょう? もしかしたら自分自身なのかもしれません。「だからOK」と、自分自身のハードルを下げたり、退路を広げたり、明るく高揚感を高めるための手段に置き換えて、発信しているかもしれません。全てがそうではありません。ただし、その可能性があることは自覚しておかなければ、足を引っ張り合うのと同じ結果になってしまうことがあります。
 となれば冒頭は、「初動!もっと低くスタートね! 絶対あげられる!」「こんなプレッシャーのかかる場面、大チャンスだよね! 勇気出してインナー狙おう!」のほうが階段を登れる気がするんじゃないかな。表現の仕方、こんな工夫を準備として用意しておきましょう。
 階段に足をかけてから挑むのと、ただ立っているところから上るのとでは大きな違いがあります。どっちの足から上ろうとしているのか、そもそも登ろうとしているのか、それすらも不明瞭な人をたくさん見てきました・・・そうならないために。「考える」って大事ですね。

No.495【二通りのchance】 

 逃してはならないものは? の問いに返ってくる言葉は先ずこのchance以外の言葉を思い浮かべるほうが難しい。こいつには二つの顔があります。一つは勝手にやってくるもの。もう一つは手繰り寄せるもの。きっと前者であっても、全くの偶然ではない根拠はあるかもしれません。後者については、それこそが生き方を自分で作り出すときに、その意志や行動力が強いときにやってくるもの。私が神様だったら、後者に微笑みます。そして、前者で得た者がすっころんだ時、ほくそ笑みます。なんて素敵な性格でしょう。
 手繰り寄せる期待感、面白さ、一生懸命に積み重ねたほど大きくなります。行き当たりばったりの興奮はすぐ冷めます。薄っぺらいchanceに浮かれてはなりません。これはきっと、このチームのメンバーの十数年後の職業選択、そして隣に誰がいるかを選ぶときに効力を発揮します。

No.496【スポーツ界のハラスメント】 

 いやなタイトルです。色々な職種、立場、年齢の方々とこの件について話す機会がありました。一堂に会したわけではありませんが。多くの人がこういいます。日本の特に球技においては遅れていると。何となく肌で感じてきて、確かにその最たる道を歩まされた経験のある部活、クラブ経験者は多いと思います。昨今、特にクローズアップされたり表面化されてきました。単にICTの発達によるものではない気がします。その背景には・・・
 グローバル化、教育イノベーション、企業の人材需要や育成の視点に変化があるからだと思います。蓋をし、うまく切り抜けるのは限界、というかもうやめた方がいい。そもそも、日本の最高機関スポーツ庁ですら「安全」をようやく掲げて体罰当のハラスメント防止の国際化戦略を打ち出しました。主たる目的は「ハラスメントを防止して外国に良い印象を!」を色々な文章、例えば「健康」を付け加えているような、窮地の苦しさや工夫を察してしまうのは、私だけではないように思います。
 最近、子どもたちの未来に向けたprojectを動かし始めましたが、その過程でいくつか学んだことがあります。そのためには、まず理念と方策と実践と改善を各クラブチームが責任をもって進める必要があります。上っ面ではなく。ということは、各種ステークスホルダ―が同じ方向を向き、もちろん協議はしつつ、子どもの考え方の幹を育て、手放すところ辺りで要約成果が得られるのかもしれません。・・・そう考えると20年30年先・・・長丁場です。きっとの考察は、ちょいバレ500号記念で掲載することになるような気がします。

No.497【策が浮かばない】 

 この窮地を脱出しよう! ボールデッドからサーブが飛び込んでくるまでにはほとんど相談や改善、ましてやシミュレーションや練習の時間はありません。そんなときの選択肢は、紐を結びなおして時間を稼ぐか笑うしかありません。

 前者は遅延行為になる可能性があります。もちろん、全ての笑顔が喜びを表現しているわけではないことくらいみんな承知しています。

 でも、残る後者の策は、それしかないのであれば全力で出し続けれるべきです。試合前のトイレの鏡で練習した笑顔以上の、もっともっとみんなの心臓をうるさくさせるほどに。

 だって、鏡は先に笑わないんです。だから自分から先に! おや、相手チームが気づき始めるのにそんなに時間はかかりません。あの子がリーダー?! 真剣で動揺して一瞬動きがゆっくりになったと思ったら、流れは引き寄せられる可能性があります。反撃開始!!

No.498【時間が解決してくれる】 

 十数年前、私が中堅として若手育成の担当を担っていた頃のこと・・・それが正解だったのかそれとも彼の道をゆがめ、返って遠回りをさせてしまったのかは今でも時々振り返ることがあります。
 彼が課せられた職務内容についての上司からの要求内容、水準が把握しきれず、自分で答えを出すこととの葛藤に憔悴の日々。その状況を把握したのは、ずいぶん時間が経っていました。ここに至るまでに・・・との思いもありましたが、「自分で考える」の責任感が強かったのでしょう。私も自身の分掌業務で過労死ラインを超える隠れ残業の日々でしたからというのは言い訳。
 私が彼と時間をかけて共有した「これから」については次のような内容でした。
・休むことを後ろ向きにとらえる必要はない。前に進むには、立ち止まって整理する時間がたくさん必要。
・近い悩みをもつ仲間、経験してきた先輩はたくさんいて、聞く耳、聞きたい耳が思いのほかたくさんあること。探す手伝いはいくらでもできる。
・整理をすること。ここに至るまでの、困惑の所在、根拠、内容、解決の糸口は? について丁寧に整理してみること。ただし、一生懸命やってきたのであれば、自分を責めることなく、一般論として、客観的な目線で整理する。この作業は、憔悴しきっているときにはすべきではないが、どこかの時点で丁寧に行う必要がある。上司の意図が、最終的にわからずじまいでは解決に至らない。
・明らかにハラスメントが存在する場合は別として、上司の意図の確認をいずれ行うこと。これはお互いのためになる。
 とても繊細な人材育成の機会です。本人の仕事への情熱、目に見えない努力を積み重ねる人となりなのか否か、それによりかかわり方は一人一人違います。しかしながら、共通して言えることは、最後の最後まで、「時間が経てば解決してくれる」と本人、関係者が時間の経過だけを待つのであれば、根本的な解決、成長には至らないんじゃないかなと思います。
 蛇足ですが、「自分で考える」という言葉には二つの意味があります。一つは「自分のみ」で考えること、もう一つは「自分で方策を考えること」。具体的な例を挙げると後者は「人に相談する」などということも策として含まれます。

No.498【マーケティング】 

 「企業および他の組織がグローバルな視野に立ち、顧客との相互理解を得ながら、公正な競争を通じて行う市場創造のための総合的活動である。」(引用)。この定義の主要部分は、後半の「市場創造のための総合的活動」と説明されています。

 私は、マーケティングについて詳しいわけではありませんが、先日、バレーボールの指導において、マーケティングを学生さんに伝授していることで、主体的な部活運営や高い競技成果を上げておられる監督さんに出会いました。

 推測ですが、リサーチ→ターゲットへの効率の良い方策(ツール、広報、仕組み、価値の設定)→実施→評価→再構築のような流れが高く専門的な協議の中で成り立たせる経験を主体的に身に付けて行けることがクラブチームの中でも必要なんだなと感じさせてくれました。「理念が最も大切」とその監督さんのおっしゃった言葉には企業人、社会人としてのグローバルな経験に裏打ちされた根拠のある信念が滲み出ているように感じました。

 小さな小学生のクラブチームといえども、初級のこのアプローチはできるはずです。かなり結びついてきました。「HIGASHI子ども未来プロジェクト」。

 人間性創造のために、バレーボール界の中の小学生バレーなのか、グローバルな社会の中の小学生バレーなのか・・・今はまだその差がありますが、きっと、未来の到達点はどちらも同じ後者に行きつくことにのぞみをもつべきだと考えています。

No.500 【ロールシフト(rore shift)】

 役割の変更(移行)のイメージで命名した練習方法です。1人~6人まで対応可能ですが、実施していてアグレッシブで面白いと感じるのは、4人でしょうか。チームのInstagramの動画再生数で断トツの再生数は予想外です。4人程度で円陣になり、攻撃者、守備者が高速で入れ替わります。
 目的は、素早い判断、基本のポジションを越えた役割の変更への対応、1手先2手先を想定した選択肢をもちつつ、合理的で効率の良い動きをすること。さらに、動きや声をさぼる瞬間をつくらずにボールをつなぐこと、大胆に動いて仲間の次の動きを誘発することなどを目的にしています。
 変化は考える機会ですし、動く必要性やつながり始めた達成感の痛快さが積み重なってきます。次にはもっと!がわかりやすい練習内容です。
 この練習での重要なポイントは、ボールがつながらなかったシーンで、時間をかけていいので、再現やつなぐ工夫を全員で確認してから再会すること。また、解決のために、そのシーンを動きの中に敢えて多めに入れていこうと確認してから再開することです。その結果をさらに評価して次のシーンへ向かうこと。
 この練習はとても体力的、集中力と発現が必要なため、1ラリーを長時間はできません。短時間集中型です。
 1人でできるんですか? と聞かれたことがあります。役割の変換という意味では、自分でアンダー→トス→フェイント→アンダー、これでも意味を成しています。2人も同様。さらに、5人以上になると、高めのトスの直後は、ブロッカーの出現も可能です。となると、ブロックフォロー担当へのシフトも可能です。このレベルはとても高度です。
 動きは徐々に遅れてきますので、ラリー間での意識の確認が重要です。また、さらに向上心をもって人の間をねらう攻撃、フェイントや強打も! 性格悪く? その方が楽しい・・・のは、わたしの性格が悪いからです。わざと二人の間を空けて、ミスリードを誘い、守備をしやすくしたり、高いトスを上げてブロッカーへのシフトをしやすくしたり・・・。
 流動的な動きをつくりやすくするために、4人の場合は攻撃にシフトした人から近い順に123を設定します。もちろん瞬時の判断で。想定は攻撃者はレフトスパイカーやライトスパイカーなどとし、レフト攻撃者想定の右側が1、左が2、真ん中が3などと決めておきます。もちろん、各チームの守備状況を勘案し、決めればいいと思います。
 また、1人~2人を中心に置き、邪魔担当にするなどのアレンジも面白いですね。仲間をまもる意識と点を取りに行く意地悪な意識のシフトのスピード感や遊び感覚もこのrore shiftの魅力の一つです。

 

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